引き続き「皮5玉手箒・上(じょう)」作り。いつもは主に大人用の棕櫚箒を作っていますが、今日から製作しているのは「6歳以下の子が使う」とご依頼いただいた棕櫚箒なので、改めて色々考えながら製作していきます。
元々「皮5玉手箒・上(じょう)」は、学校掃除で子ども達が使うために私の師匠・桑添勇雄さんが考案した棕櫚箒です。
師匠が考案する前は「トサカ型」という形の棕櫚皮手箒が掃除に使われていたそうです。子どもがトサカ型の棕櫚手箒をチャンバラごっこやエアギターなど遊びに使ったり、乱暴に扱ったり、またそうでなくとも使ううちに、1年と経たずに竹柄から棕櫚がはずれて使えなくなっていたそうです。
あるとき業者さんから「子どもがチャンバラなどしても壊れない、もっと丈夫な掃きやすい棕櫚皮手箒を作ってほしい」との依頼があり、師匠が考えて作ったのが今の「皮5玉手箒・上」です。今では棕櫚皮手箒といえば、この箒と同じような型・構造の箒が一般的になっていますが、当時は画期的な棕櫚手箒だったそうで、年間数千本の注文が来て師匠の工房だけでは生産が追いつかず、近隣工房にもお願いするくらい大変だったそうです。
画期的だった点は、それまでの片手箒には使われていなかったコウガイ(竹串)を入れ、かつ片手で掃きやすい形・構造を考えたことです。トサカ型の棕櫚手箒が使ううちに竹柄から棕櫚がはずれてしまうという構造上の弱点を、コウガイを入れることで解決しています。(画像で、棕櫚を巻いた黒竹柄や棕櫚束に刺さっている尖った竹串が「コウガイ」です)