仕上げ乾燥中の棕櫚皮荒神箒。棕櫚皮箒の穂先は、水で濡らしてから繊維状にさばく(ほぐす)ので、このように立てかけたり吊るしたりして仕上げ乾燥させます。
黒竹柄を付けた皮荒神箒3玉作り。画像右にたくさん写っているのが、小箒・荒神箒用の棕櫚皮原料です。同じ棕櫚皮でも、大きな座敷箒の長柄箒や片手箒用の棕櫚皮原料とは、採取できる部分が異なります。
小箒・荒神箒用の棕櫚皮原料は、1本の棕櫚木の中でも上方・高い位置で採れる若い皮で、幅が10cm程と細く、艶があり肉厚できめ細かく美しい皮です。
この小箒・荒神箒用の棕櫚皮原料の名称は、私たち製造職人の間では通称「マクリ」とよんでいます。ですが棕櫚皮を採取する人や棕櫚皮原料を扱う中間業者の方々と話をする時は、同じ原料を「スエマクリ(末マクリ)」と言った方が通じやすかったです。
最近では近隣の関係業者も世代交代が進み「マクリ」という言葉が通じなくなってきました。詳しく書きますと、「マクリ」という名の原料は正確には「スエマクリ(末マクリ)」と「ネマクリ(根マクリ)」の2種があり、「スエマクリ(末マクリ)」は棕櫚木の上方の美しく細い皮で棕櫚小箒・荒神箒の原料にし、対して「ネマクリ(根マクリ)」は棕櫚木の下方・棕櫚皮の剥き始めに最初に木から剥がす数枚の皮で幅は広いがあまり質の良くない皮(最も湿気や日光・風雨にさらされる部分なので傷みやすいのです)の事です。昔から「ネマクリ(根マクリ)」は棕櫚箒の原料には使わず、他の棕櫚製品に加工されていたそうです。