今日は十日戎(とおかえびす)なので町内の神社で福笹(吉兆/きっきょう)をいただきました。今の工房から車で30分程のところにある、弟子の頃に毎年師匠と歩いてお参りした神社に通っています。当時の思い出がよみがえり初心に返ります。

製作風景-【棕櫚箒】鬼毛箒(タイシ箒)長柄箒
製作風景-【棕櫚箒】鬼毛箒(タイシ箒)長柄箒

【棕櫚箒】鬼毛(タイシ)7玉長柄箒の玉(束)作り。画像は、各玉に棕櫚箒の構造上重要な部分である「足巻き(あしまき)」をしているところです。白い「引き紐」で仮締めしながら銅線を巻いていきます。
このように引き紐で仮締めしながら手を使って糸や銅線で縛る棕櫚箒の作り方は、江戸時代から変わらないといわれている伝統製法です。

しかし近年よく見かける棕櫚箒や棕櫚ブラシ類は、引き紐を使わない「直締め(じかじめ)」といわれる作り方をするのが多数派のようです。直締め法も手を使うのは同じなのですが、手で直接糸や銅線を持つのではなく、ペンチで銅線等を引いて巻き締めていきます。ペンチを使うので手にかかる負担が軽減でき、かつ強く引けるのが利点です。欠点は、手を使って締める製法なら可能な細かく正確な造作が出来ない事と、ペンチで挟んだ部分の銅線が傷付き切れやすくなったり錆びやすくなるので製造時に注意が必要という事です。直締め法は、シンプルな形状で頑丈さが求められる棕櫚小箒・ブラシ類(棒束子・キリワラなど)などを作るのに適しています。

私の師匠は、鬼毛箒は全行程を、皮箒はほぼ全行程を引き紐を使った伝統製法のみでおこなっており、棕櫚皮箒については表からは見えない芯材の一部のみは直締めをしていました。私は今のところ全行程を引き紐を使った製法のみでおこなっています。