引き続き、鬼毛(本鬼毛・タチケ)の選別をしながら、本鬼毛9玉長柄箒のパーツとなる玉(束)作りをします。
銅線や蝋引き麻糸を巻く時は、右手に革手袋をしています。細かい仕事も出来るように指先は出しておきたいので、市販の革手袋の先を切って縫い留めて使っています。軍手を切って使う職人さんもいます。
素手で出来ればそれに越したことはないのですが、銅線や麻糸を全力で引くと手に食い込んで皮膚が切れてしまう場合もあり、そうなると痛くてかえって全力で引き締められないので、革手袋を使い、手を保護しながら仕事をしています。
師匠も手袋をする時としない時がありましたが、特に力の必要な鬼毛箒作りの際は手袋を使っていました。50年以上棕櫚箒を作り続けた師匠の手は変形していました。
私は弟子入り後の数年間は棕櫚皮箒しか作ることを許されていなかったので、鬼毛箒作りほど手に負荷がかかることがなく、長い間素手で製作していました。当時から何度もマメができて皮膚はずいぶん丈夫になったはずですが、どういう訳か今も革手袋をしていてもマメができて皮膚がめくれます。
原料の鬼毛が足りなくなると、棕櫚皮をほぐしただけの未選別の棕櫚繊維(タイシ=太市)の中から、本物の鬼毛(本鬼毛・タチケ)を1本ずつ選別し抜き集めていきます。ある程度の数がたまったら、またひとつ玉を作ります。