製作風景-棕櫚の鬼毛選別
製作風景-棕櫚の鬼毛選別

本鬼毛箒の玉(束)作りをするために、左手で持っている鬼毛箒用原料の棕櫚繊維「タイシ(棕櫚皮をほぐした状態の、未選別の棕櫚繊維)」の中から、本物の鬼毛(本鬼毛・タチケ)を手で1本ずつ選別し揃えていく工程。鬼毛(本鬼毛・タチケ)が一定量たまったら、本鬼毛箒の玉を作っていきます。

「本鬼毛箒」と名前や見た目が似ているので同じものだと混同されやすい箒で、ここ数十年「鬼毛箒」の名で製造流通している棕櫚繊維箒は、この本物の鬼毛を1本ずつ抜く選別工程なしに作ります。つまり上記画像で、左手で持っている選別していない棕櫚繊維を束ねて作ります。選別していない棕櫚繊維には、本物の鬼毛(本鬼毛・タチケ)とそれ以外の細く柔らかい棕櫚繊維が混在しています。本物の鬼毛が含まれる割合や質も一定ではありません。

製作風景-棕櫚の鬼毛選別
製作風景-棕櫚の鬼毛選別

箒主原料に1本ずつ手選別した本物の鬼毛ではなく、未選別の棕櫚繊維を使う棕櫚箒は、昔は「タイシ箒」とよばれ「古来からの鬼毛箒(=本鬼毛箒)」とは別種類の棕櫚箒として区別されていました。やがて本物の鬼毛(本鬼毛・タチケ)を選別する人がいなくなると本鬼毛箒はめったに製造できなくなり、棕櫚繊維箒はタイシ箒しか製造できなくなりました。
当時も良質なタイシ(未選別の棕櫚繊維)原料が入手でき質の良いタイシ箒が製造できたので、タイシ箒が「鬼毛箒」の名で流通するようになり(今ではタイシ箒という名前は一般的ではなくなり)現在に至ります。

私は本物の鬼毛を1本ずつ手選別して作る古来からの「本鬼毛箒」と、選別工程なしの棕櫚繊維(タイシ)で作り通常「鬼毛箒」として流通している棕櫚繊維箒のどちらも製作しますので尚更ややこしいのですが、それぞれの名称を「本鬼毛箒」と「鬼毛箒(タイシ箒)」と表記して区別するようにしています。