製作風景-【棕櫚箒】本鬼毛・タチケの選別
製作風景-【棕櫚箒】本鬼毛・タチケの選別

左手に、あらかじめ毛ごしらえして自然乾燥させておいた棕櫚繊維(タイシ)束を持ち、その中から本鬼毛箒の原料になる本鬼毛・タチケを、1本ずつ抜き出し数種に分類しながら揃える選別工程。

「本鬼毛箒」は名前と見た目の似ている「鬼毛箒(タイシ箒)=選別していない上質な棕櫚繊維(タイシ)で作る棕櫚箒」とは主原料が異なります。本鬼毛箒は棕櫚繊維の中でも特別太く硬い本物の鬼毛だけを1本ずつ選り集めて作る棕櫚箒です。本鬼毛箒を作るには、箒の玉(束)を作ったり組み合わせるといった製造工程と同じくらいかそれ以上の時間が、原料選び(本鬼毛選別工程)に必要です。

本鬼毛を選別し集める工程は昔は棕櫚箒職人がしていたのではなく、昭和中頃くらいまで地元農家などの副業・内職として行われ、箒職人はそうして集められた本鬼毛を箒原料として仕入れていました。当時は、木から採取した棕櫚皮から本鬼毛だけを直接抜いて集めていました。本鬼毛を抜いた後の棕櫚皮は、ロープや紐、タワシなどの原料になりました。

本鬼毛を集めるには大変な労力と時間がかかるため、昔から本鬼毛そのものも、本鬼毛箒も高値で取引されていたそうです。地元の棕櫚産業の衰退に伴い棕櫚木栽培および棕櫚皮採取がされなくなると、本鬼毛を抜き集める内職をする人もいなくなり、現在は本鬼毛箒を作るためには箒職人が自分で1本ずつ抜き集めるしかない状況です。