引き続き【棕櫚箒】皮7玉長柄箒作り。リネン色の蝋引き麻糸巻きの皮7玉長柄箒と、銅線と黒褐色の蝋引き麻糸巻きを組み合わせた意匠の2種2本を同時に製作します。
品質「特選」の棕櫚皮箒に使う棕櫚皮は、加工する前から惚れ惚れするほどの美しさです。そんな棕櫚皮は入荷する皮のうちわずか数パーセント程で、そんな質の良い棕櫚皮のことを師匠は「この皮はキジがいい」と言って選んで使っていました。当時それを聞いた私は、キジとは「木地」と書くのかなと想像していましたが、今思うともしかして「生地」だったのかもしれないとも思います。もう確かめようのないことですが。
厳選した棕櫚皮の最も質の良い部分が生きるように慎重に鋏を入れ棕櫚箒に加工していきます。たとえ同じ上質な棕櫚皮を使っても、鋏を入れるところや加工の仕方を作り手が誤れば台無しになってしまいます。師匠は瞬時に鋏を入れるべき場所を見極めて、素早く棕櫚皮箒を製作していました。あの製作リズムを真似したいと、目に焼き付けた師匠の姿を反芻するのですが、まだまだ遠く及びません。