江戸時代の棕櫚箒をご紹介します。先日は江戸時代(19世紀)の喜多川歌麿画「武家煤払の図」5枚1組のうちの3枚目に描かれた棕櫚箒をご紹介しましたが、今日は、同じ絵の5枚1組のうちの5枚目に描かれた棕櫚箒です。

武家煤払の図/部分-19世紀-喜多川歌磨-東京国立博物館研究情報アーカイブズ
武家煤払の図/部分-19世紀-喜多川歌磨-東京国立博物館研究情報アーカイブズ

大掃除中の女性4人が描かれています。3人は立てかけた畳の向こうから、もう一人の女性の動向を見守っています。下に描かれた女性は凛々しい表情で棕櫚箒を手に、2匹の鼠を追い払おうとしています。左上の女性二人の笑い声や、右上の女性の怯える声、逃げる鼠の鳴き声や足音までも聞こえてきそうな生き生きとした楽しい絵です。

武家煤払の図/部分-19世紀-喜多川歌磨-東京国立博物館研究情報アーカイブズ
武家煤払の図/部分-19世紀-喜多川歌磨-東京国立博物館研究情報アーカイブズ

この、鼠を追い払う女性が持つ棕櫚箒の部分だけを拡大してみます。

武家煤払の図/部分-19世紀-喜多川歌磨-東京国立博物館研究情報アーカイブズ
武家煤払の図/部分-19世紀-喜多川歌磨-東京国立博物館研究情報アーカイブズ

棕櫚箒だけを拡大してみますと、残念ながら解像度が低いのか、絵の劣化が進んでしまっているのか細部は不鮮明です。ぼんやりとですが、5段綴じの棕櫚箒のようですので、先日ご紹介した5枚1組のうちの3枚目の棕櫚箒と同型の箒のようです。もしご縁があれば実際の絵を拝見して確かめてみたいです。
せっかくなので、先日ご紹介した歌磨さん作の他の棕櫚箒と並べてみます。

武家煤払の図/部分-19世紀-喜多川歌磨-東京国立博物館研究情報アーカイブズ
武家煤払の図/部分-19世紀-喜多川歌磨-東京国立博物館研究情報アーカイブズ

上の画像が「武家煤払の図(5枚1組のうちの3枚目)」の棕櫚箒の拡大で、下の画像は「酩酊の七変人」の棕櫚箒を拡大したものです。

酩酊七変人(1801-1803)-喜多川歌麿-東京国立博物館 画像検索サイトより
酩酊七変人(1801-1803)-喜多川歌麿-東京国立博物館 画像検索サイトより

先日、5枚1組のうちの3枚目ご紹介の際にも書きましたが、これらの箒は棕櫚繊維箒の可能性が高いと考えています。
歌磨さんのお陰で江戸時代の棕櫚箒の姿を想像できて楽しく、また、どうやって作られているのか等あれこれ具体的に考えることができて、本当に有難いことと感謝しています。

1枚目の作品名:「武家煤払の図」(部分:5枚1組のうちの5枚目)
喜多川歌磨 画
江戸時代(19世紀)

2枚目の作品名:「武家煤払の図」(部分:5枚1組のうちの3枚目)
喜多川歌磨 画
江戸時代(19世紀)

3枚目の作品名:「酩酊の七変人」または「酩酊七変人」(部分)
喜多川歌磨 画
描かれた年代:享和年間(1801~1803年)
版元:山城屋籐右衛門

いずれの画像も出典は、東京国立博物館 研究情報アーカイブズ