製作風景-【棕櫚箒】皮5玉手箒・特選
製作風景-【棕櫚箒】皮5玉手箒・特選

棕櫚皮5玉手箒のパーツになる玉(束)作り。
皮箒の玉作りは、まず、棕櫚箒には使わない、棕櫚皮の余分な部分を素早く切り落としていく工程から始まります。1枚の棕櫚皮の中でも左手で持っているあたりは、棕櫚木の幹にぐるりとくっついていた部分で、繊維が光沢のある組織で覆われ硬く結合していて、ここは無理にほぐしても繊維の質がもろいため、棕櫚箒には使えない部分です。最初に切り落とすこの硬い部分を「カッパ」といいます。漢字表記不明ですが、私はかってに「皮端」と書くのではないかと想像しています。
カッパは、師匠の代にはもう廃棄するしかない部位になっていましたが、戦後しばらくまでは有効利用されていました。箒屋などから出る廃材のカッパは他業者にまとめて引き取られていき、近隣の軒下などに常設されていた大きな釜で茹でて繊維にほぐされ、タワシなどに加工していたそうです。カッパをほぐして出来る繊維はあまり質の良くないもろいものでしたので、物のない時代が終わると利用されなくなったそうです。その頃までは、この野上谷地域全体が棕櫚を中心にした大きな共同体になっていて、棕櫚産業の一大産地を形成していました。