棕櫚荒神箒(小箒)の煮沸消毒
棕櫚荒神箒(小箒)の煮沸消毒

今日は棕櫚箒の製作風景ではなく、棕櫚荒神箒のお手入れ方法です。あまり他で紹介されていないようなので、棕櫚荒神箒の煮沸消毒についてご紹介します。

棕櫚荒神箒(小箒)は、食品関係の現場で使われることも多い棕櫚箒です。例えば和菓子屋さんやお餅屋さん、パン屋さんやお菓子屋さん、蕎麦屋さんなどで粉を払うのに使われています。
特に皮荒神箒は棕櫚繊維が細くて当たりが柔らかく密度もあり、パウダー状のものを掃くのに向いているのでよく使われます。他にも洗い物などに使う棕櫚棒タワシ(キリワラ)や、すり鉢用のミニ箒など、棕櫚荒神箒をキッチンなど食べ物に触れる環境で使用する際には、除菌・消毒したいと思う事が多々あるのではないかと思います。

棕櫚荒神箒の煮沸消毒は可能です。ただし、あまり長時間や、頻繁に煮沸すると棕櫚繊維の油分が徐々に抜けて、煮沸しない場合よりも箒が早く傷む可能性は高いです。しかし食べ物に棕櫚荒神箒を使用する場合は清潔さが大切ですので、箒はある程度消耗品と考え、時々煮沸消毒するのがよいかと思います。
1~2分程度の短時間で煮沸し終え、出来るだけ早く完全乾燥させるのがコツです。
少し調べたところ、当店の棕櫚箒に使用している銅線(エナメル線)の被膜の耐熱温度は120度以上あるようですので、銅線が熱湯に浸かっても問題ありません。

煮沸消毒し乾燥中の皮荒神箒
煮沸消毒し乾燥中の皮荒神箒

上記のような念のための除菌・消毒以外に、棕櫚荒神箒(小箒)が万一カビくさくなってしまった場合、棕櫚箒をゴミ箱に捨ててしまう前にお試しいただきたいのも煮沸消毒です。カビは棕櫚箒本体というよりも、表面に付着している粉や埃に発生します。

我が家の石臼で使っていた皮荒神箒3玉/共柄(ともえ)を煮沸消毒しました。粉が付着したまま保管してしまい、先日久しぶりに取り出したところ、恥ずかしながら荒神箒からカビの臭いが。このままではとても使えません。しかし箒はまだほとんど使っておらず捨てるにはもったいない。そこで煮沸消毒を試したところ、カビの臭いは消えてまた使える状態になりました。

煮沸消毒後の皮荒神箒
煮沸消毒後の皮荒神箒

【煮沸消毒の方法:棕櫚荒神箒の場合】
1. 箒が入るサイズのお鍋に、箒が浸かる程度のお湯を沸かします。
2. 沸騰したお湯に箒を入れます。ぷかぷか浮いてしまう場合は、箸などで押さえてお湯に完全に沈めるか、落し蓋をして1~2分程煮沸します。
3. その後、箒をお湯から上げボウルなどにためた水に浸けて冷ますか、流水で軽く洗って冷まし、箒をピッピッと振ってしっかり水切りします。
4. 洗濯物を干すのと同様に干します(今回我が家では洗濯物と一緒に干しました)。早く完全乾燥させるためには、風通しと日当たりのよい場所に干すのが一番です。(普段の箒の保管場所には紫外線は厳禁ですが、乾燥させるための短期間なら日光に当ててもまったく問題ありません)
5. 芯までしっかり乾燥したら、においが消えたかどうかチェック。問題なければこれで煮沸消毒は完了です。

ただし竹柄の付いた荒神箒の場合は少し注意が必要です。竹柄はあまり熱湯に浸けないように、棕櫚部分だけを煮沸する方が失敗が少ないと思います。竹柄には吊紐を付けるための穴やコウガイ(竹串)を通すための穴があいているので、もし竹柄も含め丸ごと浸けるとその穴から竹節の中にお湯が入り、竹柄を早く乾かすのが難しくなるからです。
(注)荒神箒ではなく、座敷箒(長柄や片手箒)の鬼毛箒・本鬼毛箒の芯には少量のワラが入っているので、丸洗いは厳禁です。また、座敷箒(長柄や片手箒)の穂先の水洗いは当店ではお勧めしておりませんが(昔から当地域では棕櫚箒を濡らすことや、濡れた場所を掃くのも厳禁とされているため)、可能です。ただし座敷箒は棕櫚の使用量が荒神箒よりもはるかに多いので、毛束の中心部まで完全乾燥させるのには数日かかります。