おあずかりしていた鬼毛箒の修理。黒竹柄の差し替え修理です。「手箒(てぼうき)」とよばれる片手箒で、短柄・半柄などとよばれることもあります。
画像1枚目と3枚目は、いったん箒を完全分解し黒竹柄を差し替える修理をした後(修理途中)の画像です。
下の画像2枚目が修理前の画像です。お届けしてまだ3年ほど、お客様から「ほうきの柄がいつの間にか折れてしまった」と修理依頼を受け拝見したところ、竹を食べる虫の食害により黒竹の内部がボロボロになり折れてしまったのだと分かりました。棕櫚部分はまったく傷みがなく綺麗な状態のままで、黒竹柄だけが折れていました。
虫の正式名称は分からないのですが当地域では「竹喰い虫」とよんだりしています。竹を食べる虫は何種類かいるそうで、活発なのは春から秋の間でしょうか、都市部でも生息しているようで完全に防ぐのは難しいです。
被害画像を見てしまうと竹柄の箒をお持ちの方は心配になるかと思いますが、このような虫食いによる被害は今のところ滅多になく、この仕事に12年ほど携わった中では数例しか見たことがありません。当店で使用している黒竹は黒竹屋さんから出荷される前に高温の火で炙る熱処理を受けており、私も箒の製作時・仕上げ時に黒竹に異常がないかチェックしています。
しかしもしかすると今後、温暖化・気候変動の影響で虫食い被害が増えるかもしれませんし、時々ほうきの柄に異変がないか観察していただければ早期発見につながると思い画像を掲載しました。
もし竹に直径1~2mmほどの小さな穴があったり、吊るした箒やその周囲になぜか白い粉が付着していたり、ぶつけた覚えがないのに竹の一部が欠けたようになっていれば虫食いを疑ってください。
竹を食べるのは全長数mmの白い小さな幼虫で、穴をのぞくと幼虫の姿が見えることもあります。成虫は小さなアブやハチのような羽のある昆虫です。棕櫚箒に限らず、竹製品全般につく虫です。今回修理したこの箒には虫の姿はありませんでした。すでに成虫になり巣立った後だったようです。