【棕櫚箒】鬼毛(タイシ)9玉長柄箒の玉(束)作り。画像1枚目は、玉の芯に少量入れる糯藁の芯を選び出すために、藁の葉やハカマを取り除いているところです。和歌山県橋本市で農家をしている親類が作った糯米の藁を譲ってもらっています。
鬼毛箒・本鬼毛箒の玉の芯に棕櫚繊維と藁を入れるのは、和歌山県に伝わる棕櫚箒の伝統的な技法のひとつです。実は芯材は棕櫚繊維だけを使って縛る方が簡単なのですが、丈夫で長く使える箒にするために力いっぱい糸や銅線で玉を巻き締めるため、少し藁を入れないとカチカチに固く締まりすぎて、後で箒を組み立てる際にコウガイ(竹串)が刺さらなくなってしまうのです。
よく見かける外国製の棕櫚箒・鬼毛箒の玉の芯には棕櫚繊維や藁は使われておらず、棕櫚皮の硬い部分を丸めたものが入っている事が多いです。
いま和歌山で伝承されている棕櫚箒製造技術は、元々は京都で生まれ完成した製法が江戸時代に和歌山など西日本各地に伝わったものと考えられています。画像でしか見たことがないのですが、むかし京都で作られていた棕櫚箒と和歌山の棕櫚箒は型や製法などよく似ており共通するところが多いので、おそらく京都の鬼毛箒の玉の芯にかなり早い時代から藁が入っていたのではないかと想像しています。もし京都で作られた古い棕櫚鬼毛箒を拝見する機会があれば、ぜひ内部を見てみたいと思っています。
いま継承してる伝統的な棕櫚箒の製造技術はいつ頃確立したのか、分からない・伝わっていない事が多いのです。京都で作られ始めた頃から今に至る数百年間は、時代が大きく変わっても絶えることなく誰かが技術を受け継ぎ作り続け、また多くの人の生活に寄り添ってきた箒だという事は間違いないです。