引き続き本鬼毛9玉長柄箒作り。
台風21号、すごい雨でしたがうちの集落に大きな被害はありませんでした。しかし町内の国道370号(高野山へ続く高野西街道)が一部崩落し、しばらく全面通行止めとのこと。近隣の市や町にも被害の大きい地域があります。被災された方々にお見舞い申し上げます。
今日は先日に続いて棕櫚で出来ている物をご紹介します。棕櫚皮が使われている炭斗(炭取・すみとり)です。これは中古で手に入れた物で詳しい事は分からないのですが、茶道の炭点前で使う器だそうです。
普通に置いた状態では棕櫚は見えませんが、裏返すと棕櫚皮が使われているのが分かります。網組の内側に棕櫚皮を敷き、その上から和紙を張り、黒い漆が塗られています。
日にかざし底面から撮影したところです。薄い棕櫚皮が一重、入っています。
先日、棕櫚の鍋敷きをご紹介した際に思い出した、地元に伝わる「しゅろの歌」をご紹介します。改めて拝読すると長文でしたので、数日数回に分けてご紹介します。残念ながら詩なのか、歌詞なのか(歌詞ならばどんなメロディだったのか)までは私には伝わっていません。
(「しゅろの歌」その1。数回に分けてご紹介します)
「しゅろの歌」 田中芳男
比類希なる 棕櫚の木や み国のものと なるうえは
蒔きて植え替え 育て上げ 十年たてば 用だちて
それよりい出す 産物は まず第一に 毛皮にて
年々(としどし)取れて 用いあり そのあらましを あげるなら(柳野源之助著「和歌山県の棕梠栽培」大正11刊)
参考文献:展示解説集第17集 海南地方における「家庭用品産業の歩み」-棕梠加工業から合成繊維加工業へ-(平成10年10月1日 海南市立歴史民俗資料館)、
その他、地元の方々にいただいた「しゅろの歌」の手書きやコピーの資料
原文はすべてひらがな(旧かな)のようです。参考までに私なりの訳文を。
「しゅろの歌」 田中芳男
比べるものがないほど素晴らしい棕櫚の木は
種を蒔き 植え替え育て 10年たてば役にたつ
棕櫚の木から生まれる産物は まず第一に棕櫚皮です
毎年収穫でき 色々な事に使えます
主に何に用いるかといえば—-(その2に続く)
ここから先の詩は棕櫚の木の使い道・棕櫚の産物の羅列が延々と続きます。
この詩をはじめて教わった時は、棕櫚の用途の多さと、地元の方の棕櫚への愛着に驚きました。
棕櫚の木が、この地の人々の生活にどれほど深く関わっていたのかがうかがえる、貴重な史料になっています。