あらかじめ毛ごしらえ・自然乾燥を終えた「未選別の棕櫚繊維(タイシ)」束の中から本鬼毛箒の原料になる本鬼毛・タチケを、1本ずつ抜き出し数種に分類しながら揃える原料選別工程。

「本鬼毛」とは、1枚の棕櫚皮から多くて10本前後とれるといわれる、特別太く硬く丈夫な棕櫚繊維の事です。「タチケ」は本鬼毛の近くにあり、本鬼毛の次に太く硬く丈夫な棕櫚繊維です。本鬼毛・タチケは他の多くの棕櫚繊維と混在しているため、人が手で1本ずつ抜き集めなければ、本鬼毛・タチケだけを使った棕櫚製品を作る事は出来ません。本鬼毛箒は、それらを1本ずつ抜き集めたうち、特に長く太く真っ直ぐな本鬼毛・タチケを主原料にして作る棕櫚箒です。
昔は分業で本鬼毛を選別していました。大変な手間と時間がかかり、棕櫚の量も普通の棕櫚鬼毛箒(タイシ箒)や棕櫚皮箒よりも多く必要なため、昔から本鬼毛箒の品質の高さは知られていたものの、製造数が少なく高価だったため、まず目にすることのない箒だったそうです。

毛ごしらえ:入荷したままの未選別の棕櫚繊維は、梱包時の縛り癖が付き棕櫚粉など汚れも付着しているため、そのままでは棕櫚箒作りに使えません。水に浸け汚れを落とすとともに、毛捌き機(けさばきき)のローラーに通してまっすぐに伸ばし整え、裁断し自然乾燥させます。毛ごしらえを終えた棕櫚繊維(タイシ)は、そのまま使うと鬼毛箒(タイシ箒)の原料に、またこの中に僅かに含まれる本物の鬼毛(本鬼毛・タチケ)だけを繊維1本ずつ手選別して抜き集めれば本鬼毛箒の原料になります。