今日は海南市歴史民俗資料館所蔵の足踏み式製縄機で棕櫚紐・縄を作れるのかどうか試させていただきました。昨年お約束していたのが、新型コロナウイルス感染拡大により延び延びに。ようやく実現となりました。

二番毛の棕櫚繊維をねじったもの
二番毛の棕櫚繊維をねじったもの

私は手綯い縄以外の方法で棕櫚縄を作るのは初めてで、過去に棕櫚紐職人さんやパーム縄職人さんを訪ねたのも数回だけなので製縄について分からない事が多いです。棕櫚箒を作る工程で、下準備の毛ごしらえをすると出てくる「二番毛」とよばれる棕櫚繊維を、縄の原料にしやすいように粗くそろえてねじって持ち込みました。昔から棕櫚の二番毛は棕櫚紐・縄・ロープやタワシの原料に使われていました。今使用している棕櫚箒の原料繊維は、棕櫚の中でも特に長い繊維を仕入れているので、紐・縄の原料に適しているのではないかと予想しました。

足踏み式製縄機-海南市歴史民俗資料館所蔵
足踏み式製縄機-海南市歴史民俗資料館所蔵

これが足踏み式製縄機です。読み方はおそらく「製縄機=セイジョウキ」でしょうが、「セイジョウキ」と言うとたいてい「星条旗」「清浄機」と間違われますので「セイナワキ」とか「縄綯い機(ナワナイキ)」と言ったりもしています。現存する足踏み式製縄機はワラ縄を綯うために作られたもので、写真の機械もワラ縄作りに使われていたそうです。こういった製縄機は昔の農家さんの間でかなり普及しており、全国にいくつもメーカーがあったようです。かつてこの地の棕櫚産業の主力商品は製縄機による棕櫚縄だったという話や(もちろん足踏み式ではなく動力式・モーター式の製縄機に変わった)、地元の人から「昔、うちのおばあちゃんは棕櫚縄を手で綯ったり、足踏み式製縄機を使って綯っていたよ」という話を聞いて、私も一度棕櫚で試してみたいと思っていました。

足踏み式製縄機-海南市歴史民俗資料館所蔵
足踏み式製縄機-海南市歴史民俗資料館所蔵

職員さんに使い方を教わり、なんとか形になりました。想像よりも太縄になっています。途中、棕櫚繊維の量を減らしたり増やしたりして太さ調整しながら綯ったので少々不細工な仕上りに。昔の人の知恵がつまった足踏み式製縄機。機械の仕組みや工程が面白いだけでなく、棕櫚箒とはまったく違う考え方での「棕櫚」という素材の特性の生かし方、非常に勉強になりました。今後何らかの形で活用できれば楽しそうです。海南市歴史民俗資料館の皆様、貴重な機械を使わせていただき本当にありがとうございました。