製作風景-【棕櫚箒】鬼毛箒の修理/柄の差替え

製作風景-【棕櫚箒】鬼毛箒の修理/柄の差替え

お客様にお送りした【棕櫚箒】本鬼毛9玉長柄箒の黒竹柄の差し替え修理。こちらでは竹喰い虫とよんでいる、竹の内側の白い部分を食べてしまう虫による食害で黒竹が割れていました。返送された箒は黒竹全体が白い粉まみれになった状態でしたので、一目で虫食い被害と分かりました。箒をお届けしてまだ1か月足らず、しかも冬季の虫食い被害は予想していませんでした。このような早期の修理例ははじめてです。

製作風景-【棕櫚箒】鬼毛箒の修理/柄の差替え

製作風景-【棕櫚箒】鬼毛箒の修理/柄の差替え

毎本、黒竹のすみずみまで検品し問題ないと判断して製作してきましたが、お客様に嫌な思いをさせてしまったと思うと胸が痛み、自分がまったく見抜けなかった事にもショックを受けました。竹喰い虫が入った痕跡は見た目ではまったく分からない場合がある、と聞いてはいましたが今回が果たしてそうだったのかどうか、痕跡(竹にあいた直径1mmほどの小さな穴など)を見落としていたのかもしれません。また、冬季でも暖かい室内では虫が活動することがある、という実例となりました。

製作風景-【棕櫚箒】鬼毛箒の修理/柄の差替え

製作風景-【棕櫚箒】鬼毛箒の修理/柄の差替え

被害画像を見てしまうと竹柄の箒をお持ちの方は心配になるかと思いますが、このような虫食いによる被害は今のところ滅多になく、この仕事に12年ほど携わった中では数例しか見たことがありません。とはいえ、昨年10月12日にも同様の虫食い被害による修理をしたことがあり(お届けして3年程の箒でした)、近年、虫食い被害が増えているような印象はあります。

製作風景-【棕櫚箒】鬼毛箒の修理/柄の差替え

製作風景-【棕櫚箒】鬼毛箒の修理/柄の差替え

当店で使用している黒竹は黒竹屋さんから出荷される前に高温の火で炙る熱処理を受けており、私も箒の製作時・仕上げ時に黒竹に異常がないかチェックしています。それでも見逃してしまう事があるし、お客様の所で数年経つうちに虫が入ってしまうこともあります。
虫が食べるということは薬品処理されていない安全な黒竹だという事ですが、今後、虫食い被害が増えない事を願うばかりです。柄を差し替えるためには、棕櫚部分はまったく問題ないのにも関わらず分解修理するしかなく、私にとって思いのほか精神的につらいものがありました。

製作風景-【棕櫚箒】鬼毛箒の修理/柄の差替え

製作風景-【棕櫚箒】鬼毛箒の修理/柄の差替え

傷んだ柄は切り落としてから箒を分解し、銅線を巻き直し、翌日中に黒竹柄の差し替え修理を終えました。