しばらく皮荒神箒3玉の製作が続きますので、今日は先日、棒束子(キリワラ)を製作した際に「近いうちにご紹介したい」と書いた江戸時代の絵に描かれているキリワラをひとつご紹介します。
赤丸で印したのが棒束子(キリワラ)です。棒束子(キリワラ)はタワシの元祖で、昔の人は「切り藁」の名前の通りワラなど植物の繊維を束ねたこのような形状のものを洗い物に使っていました。明治時代に亀の子たわしが発明されるまではタワシといえばこのような形状でした。

江戸時代の棕櫚箒-歌川国直画-花筐-天保12年/1841年
江戸時代の棕櫚箒-歌川国直画-花筐-天保12年/1841年

画像2枚目は1枚目を拡大したものです。現代の棒束子(キリワラ)に比べ、ずいぶんと簡素な作りなのが分かります。
この絵にはキリワラ以外に、現代で使われているのと同じような台所用品が複数描かれていて興味深いです。

江戸時代の棕櫚箒-歌川国直画-花筐-天保12年/1841年
江戸時代の棕櫚箒-歌川国直画-花筐-天保12年/1841年

水桶の側には洗い物用のキリワラ、竈(かまど)の傍には荒神箒、鉄鍋、おろし金や包丁のほか、竹製のササラ、貝杓子(かいじゃくし)、すり鉢などが描かれています。キリワラの下の黒く四角い物は、おそらく割れた瓦で、よくキリワラの受け皿の代わりに使われていたそうです。貝杓子は、ホタテ貝など平たい貝に竹柄や木柄を付けたお玉で、江戸時代には一般的だったのか描かれているのを度々見たことがあります。

【棕櫚箒】棒束子[キリワラ]
【棕櫚箒】棒束子[キリワラ]
画像3枚目は現代の棕櫚の棒束子(キリワラ)です。

出典:江戸庶民風俗図絵/三谷一馬 著/「貧家の台所」
中央公論新社 発行/2007年/p.394/ISBN978-4-12-204834-8
歌川国直 画 /人情本 「四時遊観 花筐」/(天保12年/1841年)